上場とは?市場の種類と仕組みを基礎から解説【2026】
この記事の要点
- 上場条件は市場ごとに別物。決算年数・時価総額・株主数を混同しない
- 海外市場は国ごとに制度が異なり、DEMと公式市場でも条件が大きく違う
- 上場準備は監査・証券会社・弁護士など複数専門家の分担作業で進む
上場とは何か、結論から
上場とは、株式会社が発行する株式を証券取引所の市場で自由に売買できるようにすることです。市場によって上場できる条件(決算書の年数、時価総額、株主数など)がまったく異なるため、「上場とは」を理解する第一歩は、自社がどの市場を目指すのかを決めることになります。
この記事では、上場の基本的な意味と、市場ごとに条件が分かれる仕組みを整理します。具体的な上場基準の数値は市場ごとに個別に確認する必要があるため、ここでは考え方の整理を中心に解説します。
「上場」とは具体的に何をすることか
上場は、未上場会社の株式を、証券取引所という公的な売買の場に乗せる手続きです。上場すると、不特定多数の投資家が市場を通じて株式を売買できるようになります。これにより会社は、株式の発行を通じて資金を調達しやすくなる一方、投資家保護のための開示義務や内部管理体制の整備が求められるようになります。
ここで重要なのは、「上場」という言葉自体は世界共通でも、上場先の市場によって求められる条件・手続き・監督機関がまったく違うという点です。日本国内だけでも、東京証券取引所にはプライム・スタンダード・グロースという区分があり、さらに特定投資家(プロの投資家)向けの東京プロマーケットという市場もあります。東京プロマーケットは2009年にTOKYO AIMとして開設され、2012年7月に現在の名称になりました。各区分の具体的な上場基準は変更されることがあるため、最新の数値は日本取引所グループの公式案内で確認することをおすすめします。
市場を混ぜて考えると失敗しやすい理由
上場準備でよくあるつまずきの一つが、「上場の条件」を調べる際に、どの市場の条件かを意識せずに情報を集めてしまうことです。たとえば決算書の年数や時価総額の基準は市場ごとに数値が異なるため、A市場の条件とB市場の条件を混同したまま資本政策を組んでしまうと、後になって計画を大きく見直す必要が出てくるケースがあります。
上場を検討し始めた段階では、まず「どの市場の、どの区分を目指すか」を先に定め、そのうえで条件を一つずつ確認していく進め方が、遠回りを防ぐことにつながります。
リバティーコンサルティング株式会社が、モーリシャス証券取引所の新興市場(DEM)への上場を、日本側のプロジェクト責任者として支援しています。
上場の条件に届くか相談する →海外市場という選択肢もある
上場先は国内の取引所だけではありません。海外の証券取引所に上場するという選択肢を検討する会社もあります。海外市場は国や取引所ごとに制度がまったく異なり、使用できる通貨や監督機関、求められる監査基準も変わってきます。
一例として、アフリカのモーリシャス証券取引所(Stock Exchange of Mauritius・SEM)には、公式市場(Official Market)と、新興企業向けの新興市場(Development & Enterprise Market・DEM)という2つの区分があります。監督は金融サービス委員会(FSC)が行います。
DEMの上場条件は、国際会計基準(IFRS)で作成し国際監査基準(ISA)に基づく限定のつかない監査を受けた決算書1年分、上場時の時価総額2,000万ルピー以上(2026年10月14日時点の為替で日本円約6,700万円程度。為替相場で変わるため、あくまで目安です)、株主100人以上、かつ一般株主の持ち分10%以上(この2つは別々の条件です)などとなっています。実績がまだ無い会社でも、独立した財務アドバイザーが認めた3年分の事業計画があれば申請できる制度もあります。詳細はDEMの上場条件(SEM公式)で確認できます。
一方、公式市場は決算書3年分、時価総額2,000万ルピー以上、株主200人以上かつ一般株主の持ち分25%以上(最初は15%、3年以内に20%、5年目までに25%とする段階方式も用意されています)が条件です。こちらは公式市場の上場条件(SEM公式)で確認できます。
2025年末時点で、公式市場には57社、DEMには33社が上場しています(取引所のファクトブックによる)。2010年以降に新規上場した255銘柄(株式・債券などを含み、会社の数ではありません)のうち124銘柄が海外の発行体であり、米ドル・ユーロ・英ポンド・南アフリカランド・ルピーの5通貨での売買・決済が可能です。これらは取引所の概要(SEM公式)にまとまっています。なお2024年12月には、アフリカの成長企業向けの区画「SEMX」も新設されています。
海外市場への上場は、現地の弁護士・監査人・証券会社に加え、DEMであれば「コーポレート・アドバイザー」、公式市場であれば登録された「スポンサー」の設置が規則上必要になるなど、国内上場とは異なる専門家体制を組む必要があります。上場の可否や時期は、最終的に取引所と監督当局の審査・判断によって決まるものであり、期間や結果を約束するものではありません。
上場までの一般的な流れ
市場がどこであっても、上場準備にはおおよそ共通する段階があります。以下はあくまで一般的な例であり、実際にかかる期間は会社の状況によって大きく異なります。
- 現状の分析と計画づくり(事業・財務の調査、上場の形の設計、専門家選び)
- 監査と決算書の整備(国際会計基準などへの対応)
- 申請書類の準備(上場書類・事業計画・法務や企業統治の整備)
- 取引所・当局への申請と審査対応(照会への回答)
- 投資家向け説明資料と募集の準備
- 上場・売買開始と、その後の継続開示
このうち、それまで監査を受けていなかった会社にとっては、2番目の過去の決算の監査整備がもっとも時間のかかる工程になりやすい傾向があります。また、株式の募集・売り出し・勧誘そのものは、各国で免許や登録を持つ証券会社などが担う業務であり、全体の進行を取りまとめる役割とは別の専門性が必要です。
上場条件を調べるときに確認すべきこと
上場を検討し始めた段階では、次の3点を最初に整理すると、その後の情報収集が進めやすくなります。
1. 目指す市場・区分を1つに絞る(複数候補なら条件ごとに分けて比較する)
国内か海外か、国内であればどの区分かによって、決算書の年数や時価総会などの条件がまったく異なります。複数の候補を比較する場合も、必ず市場ごとに条件を分けて整理することが重要です。
2. 誰に・何を・いつ依頼する仕事かを把握する
監査は監査法人、募集・売り出しの実務は証券会社、法務面は弁護士というように、上場準備は複数の専門家が分担する仕事です。どの工程を誰に依頼するかを早い段階で把握しておくと、準備の抜け漏れを防ぎやすくなります。
3. 条件の最新情報は必ず公式情報で確認する
上場基準は制度改定により変更されることがあります。本記事で触れた数値も将来変わる可能性があるため、実際の準備段階では必ず各取引所・監督当局の公式情報、または監査法人・証券会社・弁護士など専門家への確認を行ってください。国内の資金調達制度全般については中小企業庁の案内も参考になります。
まとめ
上場とは、株式を証券取引所の市場で売買可能にすることであり、その条件は市場ごとに大きく異なります。国内の東証各区分や東京プロマーケット、海外のモーリシャス証券取引所のように、決算書の年数・時価総額・株主数などの基準はそれぞれ別物として理解する必要があります。まずはどの市場を目指すのかを定め、専門家と連携しながら条件を一つずつ確認していくことが、上場準備の土台になります。
よくある質問
- Q. 上場とはどういう意味ですか?
- A. 株式会社が発行する株式を、証券取引所という公的な市場で自由に売買できるようにすることです。資金調達がしやすくなる一方、開示義務や内部管理体制の整備が求められます。
- Q. 上場する市場はどうやって選べばいいですか?
- A. まず国内か海外か、国内であればどの区分(プライム・スタンダード・グロース・東京プロマーケットなど)を目指すかを決めることが出発点です。市場ごとに条件がまったく異なるため、複数候補がある場合は条件を分けて比較する必要があります。
- Q. 上場までどのくらいの期間がかかりますか?
- A. 現状分析、監査・決算書整備、申請書類準備、審査対応、募集準備、上場・開示という一般的な流れがありますが、期間は会社の状況によって大きく異なり、一律の期間を約束することはできません。



