上場基準とは?市場別の条件と確認手順【2026年】
この記事の要点
- 上場基準は市場ごとに条件が異なり混同は禁物
- DEMは決算1年分・時価総額2000万ルピー程度が条件
- 監査未経験の会社は決算整備が最も時間かかりやすい
上場基準とは何か、結論から
上場基準とは、株式を証券取引所で売買できるようにするために、取引所ごとに定められた決算内容・株主数・時価総額などの条件のことです。市場によって条件がまったく異なるため、「どの市場の、どの基準か」を最初に特定しないと準備の方向が定まりません。
日本国内では東京証券取引所(東証)が市場区分ごとに数値基準を公表しており、特定投資家(プロの投資家)向けの東京プロマーケットのように、一般的な数値基準とは別の枠組みを持つ市場もあります。国内の正確な数値は時期によって見直されるため、必ず日本取引所グループの公式案内で最新の内容を確認してください。本記事では上場基準という言葉の考え方と確認の手順を解説したうえで、数値基準を確認できている海外市場の例としてモーリシャス証券取引所を取り上げます。
なぜ「市場ごとに確認」が必須なのか
上場基準を調べるときに起こりやすい失敗が、複数の市場の条件を混同してしまうことです。例えば「株主数は100人でよい」という情報と「株主数は200人必要」という情報の両方を見かけて混乱するケースがありますが、これは異なる市場・異なる区分の基準を同時に見ているために起こります。
東証は市場区分(プライム・スタンダード・グロースなど)ごとに時価総額や利益水準、株主数の基準を分けています。海外取引所でも同様に、実績を重視する市場と、将来の事業計画を重視する市場が分かれていることが一般的です。基準を調べる際は、まず「どの取引所の、どの市場区分の話か」を見出しレベルで区切って整理することが、誤読を防ぐ最初のステップになります。
リバティーコンサルティング株式会社が、モーリシャス証券取引所の新興市場(DEM)への上場を、日本側のプロジェクト責任者として支援しています。
上場の条件に届くか相談する →海外市場の数値基準の例:モーリシャス証券取引所
数値基準を具体的にイメージするために、モーリシャス証券取引所(Stock Exchange of Mauritius・SEM)の例を見てみます。この取引所は金融サービス委員会(FSC)の監督下にあり、新興市場(Development & Enterprise Market・DEM)と公式市場(Official Market)という2つの区分を持っています。
DEM(新興市場)の主な条件(確認時間:3分程度)
- 決算書1年分(国際会計基準・IFRSで作成、国際監査基準・ISAで限定のつかない監査済み)
- 上場時の時価総額2,000万ルピー以上(2026年10月14日の為替で日本円約6,700万円程度。為替変動があるため「約」の数字です)
- 株主100人以上
- 一般株主の持ち分10%以上(株主数と持ち分の割合は別々の条件で、どちらも満たす必要があります)
実績のまだ無い会社でも、独立した財務アドバイザーが認めた3年分の事業計画があれば申請できる制度がある点はDEMの特徴です。一般株主の持ち分が10%を下回っても、1年以内に戻すと約束すれば取引所が認める場合があるという規定もあります(DEMの規則 第31.3条)。詳細はDEMの上場条件ページで確認できます。
公式市場の主な条件(確認時間:3分程度)
- 決算書3年分
- 時価総額2,000万ルピー以上
- 株主200人以上
- 一般株主の持ち分25%以上(最初15%→3年以内に20%→5年目までに25%という段階方式も用意されています)
公式市場では、申請中も上場後も取引所に登録された「スポンサー」を置く義務があり(上場規則 第4.2条)、海外の会社はモーリシャス国内で書類を受け取る代理人を置く必要もあります(同規則 第15.4条)。一方でDEMには「スポンサー」という制度は無く、代わりに取締役へ規則順守を助言し取引所との連絡を担う「コーポレート・アドバイザー」を置くことになっています(DEMの規則 第32条)。この呼び方と役割の違いは、書類を読むときに混同しやすい点なので注意が必要です。条件の詳細は公式市場の上場条件ページで確認してください。
取引所全体の規模感としては、上場会社は公式市場57社・DEM33社(2025年末の取引所ファクトブックによる)で、2010年以降に新しく上場した255銘柄(株式・債券などを含み、会社数ではありません)のうち124銘柄が海外の発行体という実績があります。米ドル・ユーロ・英ポンド・南アフリカランド・ルピーの5通貨での売買・決済にも対応しています(出典:取引所の概要ページ)。
上場準備の一般的な流れ
基準を確認したあとは、実際の準備段階に進みます。会社ごとに期間は大きく異なりますが、一般的な例としては次のような順序で進みます。
①現状分析から専門家選定まで(初期検討:数週間〜数ヶ月程度)
事業と財務の現状調査、どの市場のどの区分を狙うかという上場形態の設計、そして監査法人・証券会社・弁護士など専門家の選定を行います。この段階で市場を誤って選ぶと、後の監査対応ややり直しに時間がかかる失敗につながりやすい部分です。
②監査と決算書の整備(監査がまだの会社は最も時間がかかりやすい工程)
国際会計基準への対応や監査法人による決算書の監査を受けます。過去に監査を受けた実績が無い会社の場合、この工程が全体の中でいちばん時間のかかる所になりやすいとされています。
③申請書類の準備、④取引所・当局への申請と審査
上場書類や事業計画書の作成、法務・企業統治の整備を進め、取引所と監督当局への正式な申請を行います。審査の過程では照会への回答対応も必要です。正式な申請自体は、資格を持つ現地の専門家(スポンサーや上場アドバイザーなど)が行う業務であり、日本側の取りまとめ役が代わりに行うものではありません。
⑤投資家向け資料の準備、⑥上場・開示
募集に向けた説明資料を整え、上場・売買開始後は継続的な開示義務を果たしていくことになります。株式の募集・勧誘そのものは、その国で免許・登録を持つ証券会社などが担う業務です。
海外上場を検討する場合、役割は大きく2つに分かれます。日本側で上場戦略・工程管理・資料作成・現地との連絡を担う取りまとめ役と、現地のスポンサーやコーポレート・アドバイザー、弁護士、監査人、証券会社といった現地専門家です。上場の可否や時期は最終的に取引所と監督当局の判断によるもので、期間や結果を事前に確約できるものではありません。
まとめ:まず市場を1つに絞って基準を確認する
上場基準は市場ごとに条件がまったく異なるため、情報収集の第一歩は「自社がどの市場を目指すのか」を仮決めすることです。国内であれば日本取引所グループの市場区分ごとの案内、海外であれば各取引所と監督当局の公式ページで、決算年数・時価総額・株主数といった項目を一つずつ照合していく進め方が、遠回りを避ける方法になります。
海外上場、特に新興国の取引所を検討する場合は、国内とは異なる開示制度や監督体制が設けられていることも珍しくありません。モーリシャスのように、実績の少ない会社向けの区分(DEM)と、実績のある会社向けの区分(公式市場)を使い分ける市場もあるため、自社の成長段階に合わせた市場選びが重要になります。いずれの場合も、最終的な適合判断は監査法人や現地の専門家、監督当局への確認を通じて進めることをおすすめします。
よくある質問
- Q. 上場基準は全ての取引所で共通ですか?
- A. 共通ではありません。取引所ごと、さらに同じ取引所内でも市場区分ごとに決算年数・時価総額・株主数などの条件が異なります。必ず対象とする市場の公式案内で個別に確認する必要があります。
- Q. 実績が少ない会社でも上場基準を満たせますか?
- A. 市場によっては実績が少ない会社向けの区分が用意されている場合があります。例えばモーリシャスのDEMでは、独立した財務アドバイザーが認めた3年分の事業計画があれば申請できる制度があります。ただし可否は取引所と監督当局の判断によります。
- Q. 日本国内の上場基準の数値はどこで確認できますか?
- A. 東京証券取引所の市場区分ごとの数値基準は見直しが行われることがあるため、日本取引所グループの公式サイトで最新の案内を確認することをおすすめします。


